Naoki (Tokyo, Japan)

写真家。1950年奈良生まれ。
もともとは画家を志してアメリカで学ぶが、人との仕事が好きだったことから写真家に転向。ミラノ・ロンドンで活躍後1987年日本に帰国。
自らが写真家として活躍する一方、日本で初めて写真家、ヘア・メイク、モデルをマネージメントするコマーシャル・レップの「フェイス・トゥ・フェイス」を東京に設立。

1995
写真集「ORDINAL」を出版。東京、パリで写真展を開催。
2004
写真集「REAL FACES」(主婦の友社出版)を刊行。
日本で数少ない本格的ファッション写真家として数々のファッション誌、広告で活躍。
また、多くの雑誌創刊に関わるとともに、モデル発掘プロデュース、ヘア・メイクのディレクションなどを行う多彩なクリエイターとしても知られている。
近年では、新人モデル、カメラマン育成のためのワークショップ(WORK SHOP http://workshop.jp)を主催。
2008
渋谷パルコのロゴスギャラリーにて『Summer Diary in Sifnos 』展示
2009
ブリッツギャラリー(アート・フォト・サイト東京)にて『Shibuya Kawaii Style』展示
2010
ブルガリ銀座にて『DOUBLE』展示
2012
シャネル・ネクサス・ホールにて『MOOD-9 GIRLS』展示
2013
京都、二条城にて『MOOD-9 GIRLS』展示
長年ファッション写真を撮り続け、また数多くのモデル達の成長を見守ってきた視点から、21世紀の日本人の女の子像をテーマに作品の制作を行っている。

90年代以降、欧米では優れたファッション写真はアートの一分野として認識されるようになった。しかし日本では、それはいまだに洋服情報を伝える広告でしかない。
その理由は編集者やクライアントが撮影時の自由裁量を写真家に与えないからだ。
そんな日本でアートとしてのファッション写真に挑戦し続けているのがNAOKIだ。
それが可能なのは、彼が写真家であるとともに、アートディレクター、ヘア・メイクなどの役割をこなせるから。彼ひとりでファッション写真制作の全てをコントロールできる類まれなアーティストなのだ。

ファッション写真は写真家の天性の趣味性が作品に影響を与える。
社会階級がない戦後日本では、個性的な写真家を輩出し難い環境がある。しかしこの点でもNAOKIは特別だ。彼は奈良の高名な寺院出身なのだ。日本では地域の有力者が支援する寺院が歴史的に文化の担い手だった。NAOKIは文化的な生活環境のなか幼少期時代をすごし、自然な流れでアート関係の仕事を追求するようになる。
最初は画家を目指すが、人とのコミュニケーションに魅力を感じ写真家を志すようになる。
ファッションの本場、ミラノ、ロンドンで活躍後、80年代後半に帰国。 その後は、写真家として活躍する一方で作家活動も行っている。
初期代表作が90年代後半に制作された『ORDINAL』。街の背景が変貌したバブル崩壊後の東京のストリートを背景に、彼が見出した新人女優やモデルを起用して撮影されたスナップ風作品だ。

2000年以降は渋谷のストリートで若手モデルをコスプレ姿で撮影した『DOUBLE』に取り組む。彼は「クール・ジャパン」と呼ばれる日本のポップカルチャーにいち早く注目し、「カワイイ」を作品に取り入れている。現代美術では、村上隆がマンガ、アニメなどをベースに「カワイイ」をテーマにした作品制作をし世界的に評価を受けている。しかし、リアルな人物が被写体の写真で洗練された「カワイイ」ビジュアルを作りだすのは容易ではない。
モデルのキャスティングからヘア・メイクまで、イメージ作りの全過程をコントロールできるNAOKIだから取り組めた作品だろう。
2012年シャネル・ネクサス・ホールで発表した『MOOD-9 GIRLS』はその続編。
コスプレ、OL、ギャル、女子高生、モード系、キャバクラ、少女などのキーワードをテーマに、日本人女性たちの「カワイイ」が進化している現状をファッション写真の手法で作品化している。現在のファッション写真は時代性の表現とともに、その未来像の提示が求められている。本作からは、価値観が多様化した現代日本でNAOKIがどのような理想の女性像を見ているかを垣間見ることができる。

「カワイイ」の不完全さを愛でる眼差しは、日本古来の「侘び」・「寂び」などの美意識の延長上にある。今回シャネル・ネクサス・ホールがNAOKI作品を京都二条城で展示するのは、彼の作品テーマを意識してのことだろう。日本の伝統的美意識をモダンに再解釈した作品を歴史的建造物で見せるのは「歴史伝統を背負うことは常にそれを新たに解釈し続けること」というメッセージだ。革新的作品と歴史的作品を交互に展示しているシャネル・ネクサス・ホールは、本展示を自らのポリシーと重ね合わせているのだと思う。
また、NAOKIが発信してきた未完の美を愛でる「カワイイ」の眼差しは、戦後の経済成長優先の考えに疑問符を投げかけるのもである。リーマンショックなどを経て今世界はやっと彼のメッセージの意味に気付いたのだ。優れたファッション写真は時代の新しい価値観を提示する存在になり得る。彼の『MOOD-9 GIRLS』に至る作品はそれを私たちに教えてくれる。

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