深瀬昌久 (Tokyo, Japan)

1963年の夏。当時30歳の深瀬昌久は一人の女性を伴い、芝浦の屠殺場を訪れた。「おもしろい子がいるよ」という知人の紹介で知り合った彼女は、名を洋子といった。金沢より上京したばかりの洋子は、深瀬の望むままに、黒いマントに身を包み、屠(ほふ)られた動物たちの血と脂で黒光りのする、奇妙な形の金具のかたわらで様々なポーズを繰り広げた。これをきっかけに深瀬と洋子のフォトセッションはいよいよ燃え上がり、それから15年後の1978年には写真集『洋子』が編まれる。これは一人のモデル、一人の女性、一人の妻として洋子をレンズの先に見つめ続けた深瀬の代表作のひとつとして、今なお高い評価を得ている。

屠殺場で写した洋子の写真は、1971年に中央公論社より発刊された深瀬昌久の写真集『遊戯』に『屠』という章として十数枚が、そして1978年に朝日ソノラマより発刊された写真集『洋子』に僅か数枚が掲載されたのみで、長らく全貌は謎に包まれていた。この作品の全体像を見渡すという意味において、本書『屠』は実に半世紀の時を経て、初めて一冊にまとめられた貴重なものである。深瀬昌久が自ら焼いたビンテージプリントを忠実に再現しながら、今は亡き当人に代わって当時を記憶する洋子の助言を得ながら構成された。

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w21.6 x h28 cm
32 ページ
19 イメージ(白黒)
並製本
白黒オフセット印刷(本文) / カラーオフセット印刷(表紙)
限定750部(表紙は5種類、各限定150部)
Published in 2015
ISBN 978-4-905052-81-4