房総風土記

須田一政 (Tokyo, Japan)

外房線の片田舎に居を構えて3年近く経った頃、千葉県東部・南部をたびたび車でまわりながら、かつては観光地として訪れていた場所が最早日常の範囲にあることに気付いた。
旅に出ると、土地の歴史や舞台になった文学作品に思いを巡らせる。逆に、物語にまつわる土地の周辺に居住していると、改めて自らの日常をそれらと重ね合わせる行為が遠のいてしまいがちになる。多くの伝説や物語の舞台と同居しているという事実は、考えれば、とんでもない魅力に満ちているではないか。「房総風土記」はこんな思い付きから生まれた。
しかし、結果的には伝説や史跡というより、そこへ向かう途中の光景が多く目につくことになった。白波が立つ浜辺、風にそよぐ道草、昼下がりの国道―物語の土壌ともいえる普通の光景が、ことさら輝いて見えるのである。もしかしたら「おはなし」の種はそんな何気ないものにも宿っているのかもしれない。

この作品は2000年に写真展発表をし、今年で15年経つ。すべてポラロイド写真によるものなので、年々退色が進みつつある。いずれは、有るはずの画像が膜面から消える事態も覚悟しなくてはならない。そこに写真集の話をいただいたのである。オリジナルの命が、写真集によって引き継がれるという幸運をお察しいただけると思う。

look inside

w21.6 x h28 cm
32 ページ (両観音ページ含む)
42 イメージ(白黒)
並製本 (手綴じ)
白黒オフセット印刷(本文)
限定900部(表紙3種、各限定300部)
Published in 2015
ISBN 978-4-905052-88-3