look inside

w18.8 x h30 cm
32 ページ
20 イメージ(カラー)
並製本
カラーオフセット印刷
初版
Published in 2018
ISBN 978-4-908512-36-0

日本列島 北海道

石川直樹(Tokyo, Japan)

 自分が初めて北海道を訪れたのは、18 歳の時だった。高校の修学旅行で然別湖に行き、カヌーを漕いだ。関東のダム湖や池しか知らなかった自分は、こんなに透き通った湖があるのか、と感動し、またこの地を訪れたいと強く思った。あれから20年以上のあいだ、ぼくは今日まで断続的に北海道に通っている。この地をはじまりにして、青森、サハリン、アラスカ、そしてさらなる極北へと、いくつもの新しい旅も生まれた。ぼくにとって北海道は北の果てではなく、北方世界への入口そのものだ。
 広い北海道を自らの足で歩き、人も土地も、あらゆる出会いを忘れないよう、今まで可能な限り写真に記録してきた。「北海道」の名付け親である松浦武四郎には遠く及ばないが、今まで自分が歩いてきた北方の光の地図をいつか作りたい。境界によって区切られた地図を自明のものとせず、自分の身体を通じた新しい北の地図を描いてみたいのだ。
 札幌、函館、ニセコ、十勝や帯広、美唄、苫小牧、有珠山や昭和新山、余市、旭川や東川や剣淵、稚内、釧路や根室や中標津、天売島や焼尻島、礼文島や利尻島など、道内の各地にさまざまな思い出がある。中でも、最も足繁く通っているのが、白老や登別、そして斜里やウトロを含む知床半島だ。
 白老と登別の境界近くに「アヨロ」と呼ばれる場所がある。アヨロという地名は地元の人が聞けばどのあたりかわかるけれど、正式な住所としては通用していない。呼び名だけが今も残っている、という不思議な場所だ。
 太平洋側の苫小牧から室蘭のあたりは、緩やかに弧を描く海岸線となっていて、中でも、アヨロと呼ばれる台地が少しだけ海に突き出ている。「アヨロラボラトリー」として活動する二人の友人と共に、ぼくはこの周辺でフィールドワークを続けている。表紙の写真は、アヨロにある「カムイミンタル」(アイヌ語で「神々が踊る庭」)という名の丘から、明け方に撮影したものだ。知らなければ通りすぎてしまう静かな浜辺なのだが、ひとたび知ってしまうと深く引き寄せられる。アヨロはそんな魅惑的な土地である。
 また、知床半島の玄関口である斜里町と縁があって、毎月のように訪ねている。ここではじめた「写真ゼロ番地」というプロジェクトも3年目を迎えた。実は、このテキストも、半島の突端にある知床岬へ向かう旅の途上で書いている。知床は、他のどの地域よりも、ぼくにとっては特別な場所だ。
 北海道には思い入れがありすぎて、どこかで区切るということができない。これからもずっとつきあっていく大切な地として、ぼくの中に今後も在り続けるだろう。