look inside

w8.6 x h17.4 cm
60 ページ
32 イメージ(カラー)
上製本
カラーオフセット印刷
限定1000部
Published in 2019
ISBN 978-4-908512-72-8

Death by Selfie

Martin Parr (Bristol, UK)

検証された統計ではないが、インドは自撮りが世界で最も盛んな国だ。インドに匹敵する国があるとすれば、同じように人口が多い中国だろうか。けれども、“自撮りによる死亡者数”となると、インドに遠く及ばない。勝負にならないのだ。もし、たった一つの現象でかつてないほど多くの死者が出たとすれば、きっと自撮りがそれだけ多く行われたに違いない。

2015年、自撮りをしていて27人が亡くなった。2016年と2017年には、68人が自撮りで亡くなった。その多くは、自撮りの最中に巨大な波にさらわれた人を助けようとして水に入ったのだ。燃え盛る火に接近しすぎて命を落とすとか、崖で後ずさりしてというのもよくある。それが2018年になり、賞賛すべきことに、インドでの死者は2人にまで激減したのだ。

インド当局は、こうした危険のことをわきまえている。例えば、ボートで人気のウーティ湖では、乗船中の自撮りが全面的に禁止されている。これは、救命浮輪の装備が義務づけられているにもかかわらず、である。

それなのに、ゴアの海岸では、見回せば自撮りする人が否応なく目に入ってくる。自撮り棒を貸す業者も巡回していて、パイナップルその他の物品やメッセージやサービスなど、ビーチの人々に役立つあらゆるものといっしょに絶えず勧めてくる。

このほか、私が見ていて気づいたのは、自撮りが“撮って終わり”ではないことだ。典型的ななりゆきとしては、撮った後で何十ものオプション機能を吟味し、ときには後の処理にたっぷり10分ほど費やしたりしている。うまく編集できているのだろうか。というより、こうした自撮り写真が保存されて使われたりするのかどうかさえわからない。

ほかに目新しいことといえば、私といっしょに自撮りしたいと申し込んでくる人々だ。私が西洋人だからという理由で。もちろん私は同意する。そういうわけで、インド人のサイバースペースには何百というマーティン・パーの写真が漂っているだろう。追跡しようのないこれらの自撮り写真は、誰にも認識されないだろう。

私が観光という巨大産業を取材している間に、スマートフォンに続き自撮り棒が登場して、旅行の習慣を劇的に変えた。この現象は無視できるものではなく、この本に収められたわずかな写真にも顕著に表われている。ほとんどはインドで撮影したが、他の場所の写真もおまけとして入れてある。

マーティン・パー
2019年5月