look inside

W21 x h28 cm
72 ページ 
34 イメージ(白黒)
上製本
白黒オフセット印刷
初版700部
Published in 2020
ISBN 978-4-908512-92-6

藤崎

十文字美信 (Tokyo, Japan)

本書『藤崎』に掲載した写真は、写真家になる以前、1960年代末から’70年代初頭にかけ数回に分けて撮影した。私の初めての作品と言える。
被写体の藤崎正記と出会ったのは神奈川工業高等学校時代で、彼が15歳、私が16歳の頃だ。57年前だがその時のことを今でも鮮やかに思い出せる。長髪、黒革のパンツに黒いブーツ、ヘアーリキッドの匂いをさせて現れ、当時珍しいボタンダウンのシャツを着ていた。
親しくなるに従い意気投合して毎日のように待ち合わせ、よく遊んだ。横浜野毛のジャズ喫茶「ちぐさ」へ通い、オーネット•コールマンやジョン•コルトレーン、エリック•ドルフィーなどをリクエストして当時流行したモダンジャズを齧った。ケネス•アンガーの「Scorpio Rising」を観て興奮し、ウィリアム•バロウズ、アレン•ギンズバーグ、ジャック•ケルアックなどビートニックに影響され生活スタイルを真似ようとした。そしてウィスキーをよく飲んだ。
暗黒舞踏家大野一雄さんを紹介してくれたのも藤崎だった。ロックやパンクが主流になる前の時代だ。
当時の私は何処へ向かっていいのかわからなかった。そのくせ、自惚れと確証のない自信だけはあった。自信の出どころははっきりしないまま、ただただ、人と違うことをやりたい、あとはどうにでもなれが本当のところだったろう。
偶然のきっかけから写真家を志した20歳の時、藤崎の姿を写真に残しておこうと思った。50ccのトーハツランペットをチョッパーに改造して、当時「夢の島」と呼ばれた東京湾の埋立地へ向かった。長い直線道路を二人で狂ったように走り回り、最後はバイクを壊してガソリンタンクに火を点けた。
藤崎の滅茶苦茶な笑顔は私自身の興奮の証に思えた。
ファインダーの中から聞こえる彼の声は私の叫びであり、藤崎を撮りながら自分自身を見つめている気がしていたのだ。

十文字美信